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AIが奪うのは仕事ではない。準備のない人の居場所である

生成AIや自動化技術の進歩によって、企業の雇用環境は確実に変わり始めています。上場企業では、黒字決算の中でも新卒採用の絞り込みや、中高年の人員再編が今後さらに加速します。AIが資料を作り、集計し、顧客対応まで担うようになれば、これまで人が行ってきた定型業務の多くは見直されます。若手だから安泰、ベテランだから安全、という時代ではなくなってきたのです。

しかし、当塾が本当に重要だと思うのは、雇用不安そのものではありません。問題は、その変化の中で子どもたちに何を準備させるかです。

これから厳しくなるのは、単に「年齢が高い人」や「若い人」ではありません。危ういのは、言われたことをそのまま処理するだけの人、仕組みを理解せず、学び直しを止めた人です。逆に言えば、変化の中でも残るのは、物事の構造を理解し、自分で考え、道具としてAIや情報技術を使える人です。 では、その土台はどこで作られるのか。私は、初等期からの読書・理科・数理・情報教育にあると考えています。

まず必要なのは、読解力です。AIは流暢な文章を返しますが、それが常に正しいとは限りません。だからこそ、書かれたことをそのまま受け取るのではなく、「何が事実で、何が推測か」「前提は何か」を読み分ける力が必要になります。読書は語彙を増やすだけではありません。他人の考えを追い、複雑な情報を整理し、自分の頭で考える訓練です。

次に、数理感覚です。AI社会では、あらゆる判断の背景にデータがあります。割合、変化率、平均、ばらつき、相関――そうした見方を持っているかどうかで、社会の見え方は大きく変わります。数字に強いことは、一部の専門家だけの条件ではなくなります。

そして、当塾が特に大切だと思うのが理科です。理科は知識の暗記ではありません。目に見えない仕組みを考える訓練です。電気はどう流れるのか。光は何を運ぶのか。植物はどうやってエネルギーを蓄えるのか。こうした問いに向き合う経験は、「表面に見える結果」ではなく、「その奥にある構造」を考える力につながります。これはAIを使う時代にこそ必要な力です。

さらに、情報やプログラミングに触れることも重要です。子どもを早くから職業プログラマーにするためではありません。コンピュータが何を得意とし、どう命令すれば動くのかを体感するためです。自分で条件を考え、試し、失敗し、修正する経験は、AIを魔法の箱としてではなく、目的に応じて使いこなす姿勢を育てます。

結局、AI時代に必要なのは、正解を早く当てる力だけではありません。読んで、考えて、数で捉え、仕組みを理解し、試行錯誤できる力です。受験テクニックだけでは足りない。暗記だけでも足りない。子どもたちには、変化の激しい社会の中で、自分の足場を自分で作れる力が必要です。

AIが奪うのは、仕事そのものではないのかもしれません。本当に奪われるのは、準備のない人の居場所です。だからこそ私たち大人は、子どもたちに「変化に振り回されない土台」を、できるだけ早い時期から手渡さなければならないのだと思います。

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